以前から気になっていた
映画「国宝」を観てきまして。
映画「国宝」を観てきまして。
歌舞伎の世界を舞台に、
女方の看板役者の家に生まれた御曹司と、
その親方に拾われた任侠生まれの主人公が、
一見華やかな梨園で、
その血縁と才能の間で翻弄される愛憎劇となっております。
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わたしとしては、
ほとんど歌舞伎の知識は無いのですが、
ほとんど歌舞伎の知識は無いのですが、
そんな自分でも、
充分楽しめるエンタテインメントとなっておりました。
もちろん、歌舞伎や演目に詳しければ、
さらに深みが増すことでしょう。
ストーリーには触れませんが、また見どころを幾つか。
ストーリーには触れませんが、また見どころを幾つか。
●圧倒的映像美
梨園を描いた作品だけに、
歌舞伎の舞台、演目の映像がとても多いのですが、
この映像が非常に美しいです。
テレビでたまに見かける歌舞伎中継の映像は
当然、演目として見せているので
客席側からの目線しか見られませんが、ㅤ
本作においては、演目ではなく
その“役者”が主体ですから、
市井の人間が目にしないであろうアングルの映像も
多々、出てくるのです。
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中でも「曽根崎心中」が物語の鍵となる演目なのですが、ㅤ
映画の終盤で、主人公たちの生き様に関わる
本質的な描写があります。
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“歌舞伎の映画”ではなく、
“歌舞伎役者を描いた映画”なのだという意図が伝わり、
歌舞伎を知らないわたしのような視聴者にも
響くものがあるのかも知れません。
●血筋と才能
吉沢亮が演じるのが、女方の才能に秀でた任侠の息子。
一方、彼を拾うことになる
歌舞伎の看板役者の嫡男を横浜流星が演じております。
若くして高い演技力を備えた
ふたりの役者の競演というだけでも
相当な見応えがあります。
実際、撮影に臨む1年半も前から
歌舞伎の所作を身につける稽古に入っていたと。
監督・役者・スタッフの覚悟も相当なものだったと伺えます。
下世話なところで言えば
イケメンは女方にしても美しいな、という視点もありますが。
イケメンは女方にしても美しいな、という視点もありますが。
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幼い頃から英才教育を受け、親の背中を見て育った嫡男には
当然ながら、
身体というか“血”の中に歌舞伎の所作が染み付いていると。ㅤㅤㅤ
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一方、持って生まれた“才能”というものは
誰が見ても否定できるものではなく、
同じ教育を受ける日々を過ごせば、
“血”を超えるパフォーマンスを実現することもあり…
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その“才能”に畏れを抱く嫡男、
どうにもできない“血”の壁に苦悩する主人公、
これは歌舞伎の世界だからこそ
象徴的に描きやすいですが
象徴的に描きやすいですが
一般の世界にもあることかも知れません。
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親のダメな部分だけを受け継いだ
二代目社長とか二世議員とか。
二代目社長とか二世議員とか。
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どれだけ商売の才能があり、
その組織のリーダーに相応しい能力を持った番頭がいても、
会社を継ぐのはバカ息子…みたいなことは
いろんなところで聞く話です。
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本作では、
現実の梨園では起こり得ない事態へ話が進むのですが、ㅤ
そういえば、実際の話として
バカ息子のまま名跡を継いで、
ファンを失望させている役者がいたなぁと思い出したり。
●芸とは“業”
役者でも、歌手でも、絵描きでも、
「芸」の世界に生きる人間というのは、
その腕を高めるために一切の妥協をしないもの。
特に一流と呼ばれる方々は、
そこに意図があろうが無かろうが
自然と周りの人間を巻き込んでいく、
ひいては不幸にしてしまうものなのかも知れません。
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時に人は、それを“業”と呼びます。ㅤㅤ
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この物語に出てくる二人の役者も、
それぞれの輝きのもとに、
様々な形で周りの人間を引き寄せていきます。
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冒頭に「愛憎劇」と書きましたが、
男と男、親と息子、男と女、それぞれが絡み合い、
誰にも止められない“運命の渦”を成していく。
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敬意、尊敬、畏怖、嫉妬、嫌悪もあれば
愛着、愛情、奉仕、翻意、軽蔑、憎悪、そして慈悲もある、
人間とは、まぁ難しい生き物です。まったく。
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そんな様々な感情を餌に、「芸」を肥やしていく。
これを“業”というのか、“強欲”というのか…
しかし、それ故に、
多くの観客の琴線に触れる表現を身につけるのでしょう、かね。
この作品、
元は小説を題材にしているもので、
元は小説を題材にしているもので、
原作はもっと分厚い物語のようですが、
映画では、それを3時間にまとめ…3時間!?長い!!!
…と観る前は思ったのですが、
いざ始まってみると、映像の美しさと、物語の展開に
あっという間に過ぎ去った3時間でした。
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見る側にも結構なパワーを求める作品なので、
可能でれば劇場で、
スクリーンで観ることをオススメしたいです。
没入感があってこそですね。
テレビでは、たぶん凄みが伝わらない映画です。