ものづくりへの“志”

いっこうに収まる気配を見せない“ジャニーズ問題”。
数多の有名企業がスポンサー撤退・CM起用の見直しを発表、
それに呼応するように、
事務所側が、1年間タレントギャラ以外は受け取らない方針を打ち出し、
スポンサー契約の維持に努めているという状況です。

今や世界を相手にしている企業側にとっては、
国内のプロモーションにおいて
未成年者への性加害を数十年隠蔽していた企業に発注するなど
“人権意識の軽視”としてバッシングされるリスクしか無いようで、
もはやギャラ云々のレベルの話ではなくなっているようで。

しかし、私が違和感を覚えるのは、
それらのニュースを、テレビ局が“他人事”として報じていること。


創業者の“不法行為”を認識していながら、
自社コンテンツの視聴率を稼ぐために、
それを黙認するどころか、積極的に事務所の利益へ加担していたのは明らかで テレビ局側の姿勢によって潰された
才能やアイデアもまた数多存在していたのではと思われます。
「ジャニーズのタレントを出せば視聴率が獲れる」

そう考えるのは、データを見ても明らかだったのでしょう。
ドラマや歌番組、バラエティに至るまで 視聴率を追究することが使命の番組制作においては、
ジャニーズタレントの積極起用は、
ある種の“麻薬”のようなだったのかも知れません。

しかし、それが高じて
「ジャニーズに引き上げられたら困る」
という利害関係となり、
ジャニーズ事務所側は、
それを“悪用”して 新しいタレントのブッキングや、
競合するタレントへの“圧力”を強め
現在のような一大勢力へと仕上げていきました。
私が残念に思うのは、
「ジャニーズタレント無しに、人気コンテンツは作れない」 と
テレビ局の制作側が完全に日和ってしまっていたことです。

“志”のある制作者であれば、
演者がどこに所属しているかではなく、
どんなパフォーマンスができるかを問うはず。


それによって、視聴者を唸らせ、スポンサーを呼び込める
良質のコンテンツを生み出そうと努力するはずなのですが、
平成以降、そういう気概のある制作者は
少なくともNHKと民放キー局には居なかったということですね。
また、それは ナショナルクライアントを相手にする広告代理店も同罪。

高額の制作費をせしめ、ジャニーズタレント起用による安易なCMを量産。
同じく、事務所創業者の“不法行為”を知りながら、
構わずに同事務所に利益を運び続けてきたのですから。

ただ、今回のことで、数々の“所業”が白日のもとに晒され
世間の見る目は180度変わると思われます。
熱烈なファンたちは、相変わらずタレントたちを支持するでしょうが
(もちろん、ほとんどのタレントには責任の無いことですが)
事務所とテレビ局に“ゲタを履かせてもらっていた”だけの
凡庸なタレントたちは淘汰されていく運命にあると思われます。

そして、それこそが、芸能の領域においては健全な姿。

しかし、それも、
自社のコンテンツを“健全”に創ろうとしなかったテレビ局の責任。

事務所への断罪も報道機関としては必要なことでしょうが、
国から認可を受けて事業を行っている放送局として、
自社の所業への責任追及と、
今後の番組制作への気概を見せてほしいものです。