「のぞみ」で会いに行く という視点 / コピーライティング / By chanter 少し前からTVで流れているJR東海のCM。東海道新幹線のニーズを踏まえ、ビジネスユースをイメージさせる演出ですが、「会いにいく、が今日を変えていく。」というコンセプトの下に、あらゆるターゲットにハマるCMになっています。 思えば、コロナウィルスという邪魔者のためにクライアントはもちろん支社・本社の交流、あるいは遠くの家族や仲間を訪ねるということさえ憚られた数年を過ごしました。それだけに、この「会いに行く」というコンセプトは、数々の名作コピーを創造してきた同社ならではの視点ですね。 これまで東海道新幹線の車内で流れていたのはTOKIO「AMBITIOUS JAPAN」。のぞみが増便した際に「のぞみは、かなう」というキャッチコピーと共に大量出稿されていた記憶があります。Wikipediaによると、このコピーは後に「のぞみはいつも、そこにある」とブラッシュアップされたようですが、キャッチーなタイアップ曲(作詞:なかにし礼/作曲:筒美京平)のおかげもあり、歴史に残るクリエイティブになりました。このCMが出稿されたのが2003年。バブルの余韻さえ無くなり、就職氷河期などと謳われ学生たちは将来に不安を覚え、首相もコロコロ変わり、日本の将来さえ不安視されていた時代です。(もっとも、先行き不安は2023年も変わりませんが)そんな機運の中、この「のぞみ」が放つ“新たな期待感”に視聴者も少なからず胸が踊ったのではないでしょうか。 企業広告というものは、その性質上、どうしてもエゴイスティックな表現になりがちです。しかし鉄道など、公共のインフラを扱う場合は、そのサービスの説明のみならず、ユーザーの暮らし・文化なども包括するようなクリエイティブが求められるのですね。今回の「会いに行く〜」も歴史に残るクリエイティブになるのではないでしょうか。